「何処へ向かいましょうか?」



メガネをサングラスに変えた坂下が、尋ねた。



ん?ウチに帰るんじゃないの?



「今帰ったところで留守でしょう?

少し、寄り道しましょう。」



いや、ウチはお手伝いさんが留守番してるんだけど…。



「パパは、ドコに行きたい?」



余計なことを言うのは、やめた。



「天気も良いことですし…、気ままにドライブしましょうか?」



「うん!」



元気良く言ったものの、車に酔いやすいことが気になった。



今朝ちゃんと薬飲んだし、お喋りしてたら大丈夫…だよね?



「パパの車、カッコイイよね。

昔から、こういう車に乗ってたの?」



「子供たちが小さかった頃は、セダンに乗っていました。

このような二人乗りでは、家族で出かけられないでしょう?」



頷いたものの、坂下の家族は奥さんと大学生の息子がいたはず。



家族で、出かけないのかな?



ふと、前に坂下が言ってた言葉を思い出した。



『淋しい』



出かけることがなくなったから、車を替えたのかもしれない。



「この車を買って正解でした。」



「なんで?」



坂下の意図が分からなかった私は、聞いてみた。



「ワカとドライブするには、カッコイイ車の方が良いですから…。」



「私、パパとドライブできて…スゴく嬉しい!」



そう言うと、坂下は私以上に嬉しそうにしていた。