「坂下くん、電話でも伝えたが罰を受けてもらいますよ。

こちらのお嬢さんを、家まで送りなさい。」



坂下の車、私は嬉しいけど…。



坂下は休みの日にいきなり呼び出されたんだから、ちょっとツライよね?



だけど坂下は



「これが罰ですか?

私にしてみれば、光栄としか言いようがありません。」



なんて、嬉しそうに言った。



車に近づくと、お爺さんが少し呆れながら口を開いた。



「相変わらず、人目を惹く車に乗りおって…。」



「先生の門下生に、黒川という者がいたでしょう?

私の同級生ですが、彼の車ほどは人目を惹きません。」



「あれは、仕事で使うものだろう?

近いうちに、世話になるかもしれないがな…。」



「彼の職業をご存じでしたか。

しかしながら、先生が乗られるにはまだ早すぎます。」



私の方を見た坂下は、助手席のドアを開けると



「さあ、どうぞ。」



なんて、軽くお辞儀をしながら言った。



うわぁ、なんかお嬢様にでもなった気分。



そういえば、坂下のクラスに『アークエンジェル』なんてニックネームのスッゴイお嬢様がいたけど、彼女はこういうの当たり前なんだろうな…。



こういう場面でどう返したらいいか分からず、私は戸惑って立ち尽くした。



坂下はドアを持ったまま、空いた手を私の背中に軽く添えた。



車に乗り込んだ私が、窓から見たものは…。



私を一瞥し呆れながらため息をつく、ジイサンとお兄ちゃんの姿だった。