翌週、家族総出で出かけることになった。



そんな気分になれない私は、行きたくないって言ってみたけど…。



聞いてもらえるわけがなかった。



車酔いしやすいのもあるけど、それ以前に家族で過ごすことが億劫。



着いた先は、この前坂下と一緒に行った個展だった。



家族で来たってことは、この前会ったお爺さんに挨拶するって…ことだよね?



私の顔、覚えてたらそれこそ面倒なんじゃない?



普通なら、最初にあんなウソついた坂下を恨むとこだけど、私はここに連れてきた家族を恨んだ。



なんだか、胃がキリキリしてきたな…。



ヤバイ、酔ったかも…。



私は車を降りた途端、お手洗いに駆け込んだ。



しばらくして戻ると、書生だけがいた。



「皆様は先に向かわれました。」



「そう、私は具合悪いから休んでるって言っておいて。」



「そうはいきません、桐生家の一員として挨拶に行っていただきます。」



「無理。」



「我が儘は聞きません。」



書生が私の腕を引っ張ったせいで、足元がふらついて派手に転んだ。



顔、擦ったかな?ヒリヒリする…。



「あんまり世話焼かさないでくださいよ、お嬢さん。」



書生が、爪先で私の頭を小突いた。