「じゃあ、私と一緒だね…。」



私は、坂下を見つめながら言った。



「私、先生んちの子に生まれたかったな…。」



淋しいっていっても、きっとウチなんかよりマシ…。



「桐生さん…。」



坂下は悲しそうな顔をすると、私の頭を軽く撫でてくれた。



「“ワカ”って、呼んで。」



「それは、いたしかねます。

あなたと娘を、混同視してしまいますので…。」



「良いよ、私も“パパ”って呼んじゃうから。」



パパって言葉に、坂下の目尻が一瞬だけ下がった。



だけど、すぐに表情を元に戻す。



「やっぱり、私のこと…嫌いだよね。

散々、意地悪したもん…。」



私は膝を抱え込んで、俯いた。



「ワカを嫌いになるなど、ありません!」



いつもの坂下の声よりも大きかったから、ビックリして顔をあげた。



「…ホント?」



「ええ。」



坂下はそう言いながら、私の頭をめいっぱい撫でてくれる。



「あったかい手…。

今日から娘として可愛がってね、パパ。」



「ワカ、大好きですよ。」



坂下が和歌ちゃんと私を混同しているとしても、坂下のそばにいることは心地が良かった。