その投げつけた物が、人間国宝の手による貴重な硯でなければ…。



多分、ジイサンの逆鱗に触れることもなかったんだと思う。



ジイサンとお出掛けから戻ったばかりの母に、コッテリ絞られた。



「若菜の部屋に飾るなんて、豚に真珠だったわ…。」



真珠のネックレスをした豚…もとい、母に言われたときは、危うく爆笑するかと思った。



笑えるのはそこだけで、理不尽な説教っていうのは憂鬱な気分にさせられる。



苛々しながら部屋に戻る際、お兄ちゃんに会った。



「怒られたんだって?」



「何で書生が何も言われなくて、私だけが怒られるのよ!」



お兄ちゃんは、ぷっと吹き出して言った。



「ガキの着替えなんか見たところで、怒るわけないだろ。」



その言葉を聞いたところで、私は乱暴に襖を閉めた。



私、もう高校生だよ?



そんなのって、あんまりじゃない!!