学校から帰り、いつものように勝手口から入って自分の部屋に向かう。



私が勝手口から出入りすることについては諦めたのか、もう誰も言わなくなった。



私の部屋の前で、書生が待っていた。



「お嬢さん、旦那様がお待ちです。」



ジイサンのことだ、筆をとらなくなったことについての小言だと大方予想はつく。



私は無視を決め込もうと、部屋に入ると襖を閉めた。



ジイサンのもとに行くように促す書生の声が、部屋の外から煩いくらいに聞こえる。



着替えようと制服を脱いだところで、襖が開いた。



「お嬢さん、聞いていらっしゃいますか!?」



という書生の声と共に…。



「きゃあああっ!!」



屋敷中に、私の悲鳴が響きわたった。



男に下着姿を見られたんだから、当然だ。



棚の上に飾ってあったものを手に取ると、委細構わず投げつけた。