片付けていたら、壁とキャビネの間に何か挟まっているのに気づいた。



気になって、定規を差し込んで取ろうと試みる。



「取れたぁ。」



苦労して拾い上げたものを見た蒼が、口を開いた。



「それ、坂下先生のじゃないのか?」



坂下と出会った時に見た、黒いパスケースだ。



和歌ちゃんの写真が入っているそれを、大事にしてた筈なのに…。



何でこんなところに?



「前に無くしたって凹んでたから、一緒に墓へ入れて貰おうか。」



無くした?



寧ろ、意図的に隠されたといった方がしっくりするんだけど…。



持ち主がこの世にいない今、犯人探ししても意味がない。



「埃被ってるし、綺麗にしてあげなきゃ。」



そう言って掃除を始める私を、蒼が微笑ましそうに見ていた。



挟んであるものを、パスケースから全部取り出した。



隠すように挟まっていたのは、私と撮ったプリクラ。



坂下と泳ぎに行った帰りに、せがんで撮ったものだ。



最初は乗り気じゃなかった坂下も、落書きしてるうちに欲しくなったのか、デカプリにしたのを1枚貰っていった。



坂下が自分で落書きしたのを持っていったから、どんな落書きしたのか今まで知らなかったけど…。



坂下は、私に花嫁さんのベールとブーケの落書きを施していた。



『可愛い和歌の花嫁姿は見たいけれど、お嫁には出したくありません!』



なんて書いてるし…。



私に呼びかけてた“ワカ”は、坂下にとってずっと“和歌”だったんだね。



ここまで身代わりにするなんて酷い!って、怒ってもいいはずなのに…。



『若菜さん、ごめんなさい

それと…ありがとう』



なんて、裏に書いてあるのを読んで、許しちゃってる自分がいた。



でも、コレは罰としてお墓に入れてなんて…あげないんだから。



そんなことを考えながら、自分のポケットに仕舞った。