蒼と一緒に、部室へ向かう。



「鬼マサ、書道部に何の用があるのよ?」



合鍵で部室を開け、蒼を招き入れながら尋ねた。



「坂下先生の私物整理…って、とこかな。」



坂下の?



「先生は、戻って来ないの分かっていたんでしょ?

身辺整理しないとは思えないけど…。」



「僕も、そう思うよ。」



「だったら、必要ないじゃん。」



「だけど、万が一ってこともあるだろ?」



坂下の私物が置いてあるからって、別に邪魔になんかならない。



ってか、まだ葬儀が済んだばかりだというのに…。



そんな気持ちが心を占めて、蒼のすることに反発を覚えた。



蒼が引き出しやキャビネを開けているのを、私はただ眺める。



「コレは、誰のだ?」



しばらくして、何か見つけた蒼が私に尋ねた。



蒼が手にしていたのは、書道具が入った箱。



それには、見覚えがあった。



以前、坂下が私に貸してくれたもの。



「先生の…。」



私がポツリと言うと、蒼は私に書道具の箱を差し出した。



「じゃあコレは形見分けってことで、お前が持ってろ。」



「いいの…かな?」



「良いんじゃないの?

坂下先生、クラスの奴ら全員には物や手紙遺してるし。

寧ろ、仲の良い桐生に何も遺さないのが疑問だよ。」



私は箱に手を伸ばし、それを受け取った。



「鬼マサ、私物整理ってのは口実で…。

ホントは、私に形見分けする物を探してくれたんでしょ?」



蒼は、バレたか…って表情をした。



「片付け、手伝うよ。」



「サンキュー。」



私たちの周りは、蒼が物色したせいで散らかっていた。