坂下はビニールシートを剥がすと、私のそばにしゃがみこんだ。



「もう懲りたでしょう?」



そう言うと、私の頭にタオルをかけてくれた。



確かに、すっごく寒いんだけど…。



大っ嫌いなアンタに、そんなことされたくない!



私はそのタオルを頭から取ると、坂下の顔面に叩きつけた。



それでも坂下は



「風邪、ひきますよ?」



なんて言って、私にタオルを差し出すんだ。



一言でも「寒い」なんて口にしたら、坂下にひれ伏すような気分にさせられそうで…。



口を、真一文字に結ぶ。



私はそのまま無視すると、転がってるバケツを拾ってその場をあとにした。



一度だけ後ろを振り返ったときの光景が、印象的だった。



坂下の横顔が、淋しそうだったんだ…。