優によって、送辞は澱みなく読み進められていく。



「この学校で過ごした日々は、映像や小説では表現しきれない最高の青春があったと思います。」



確かにそうだけど、俺の青春はまだこれからだと思ってる。



ってか、一生青春…みたいな?



「全て、忘れられない…。」



ここで、優の言葉が途切れた。



「コレ、何て読むんだ?

フリガナくらい書いとけよ、桐生…。」



優のボヤキを、マイクが拾う。



かなり困っているようだったので、俺は舞台に上がって優が手にしてる原稿を覗いてみた。



あー、ちょっと難しいかも?と思いながら、俺は原稿を読み上げる。



「畢生の思い出です。」



「ヒッセイ?」



だーかーら、マイク拾ってるって…。



俺は少し呆れながら優を見て、次に卒業生たちに視線を向ける。



一旦舞台に上がってしまうと降り難い雰囲気だと思い、優と一緒に声を揃えて読み上げていった。



「「また、先輩方のより一層のご活躍と健康をお祈りし、送辞といたします。」」



「在校生代表、桐生若菜。

代読、野田優。

…と、」



なんて、優が俺にも名前を言うように促す。



「花見澤弥。」



こうして、卒業生による送辞という前代未聞の出来事が終わった。