「君に話すのは心苦しいけど…写真を預ける際に、カズくんはこう言ってた。

『これは、自分が犯した最大の罪。』

だから、この写真はカズくんと一緒に葬ってあげよう。」



罪…?



坂下は、私の頬にキスしたことを罪だと言うの?



「これは、私がいいよって言ったことだもん…。」



私はポツリと呟くと、唇を噛み締めた。



そうでもしないと、今にも涙で坂下の顔が滲んでしまうから…。



黒川さんは少し考えてから、口を開いた。



「カズくんから写真を預かった時は、それだけじゃない口振りだった…かな?」



私と過ごした日々の中で、坂下にとっては罪だと感じていたことがあったの…?



だとしたら、悲しいよ。



胸が締めつけられるような、思いがした。



黒川さんに促され、私は写真を坂下の手に戻そうとする。



その際に、裏に何か書いてあるのに気づいた。



裏を返すと…



『桐生若菜に近づくな、さもなくば…。』



少し可愛らしい女の子特有の字…、すぐに深夏の字だと分かった。



おそらく深夏は、コレを使って坂下を脅していたのだと思う。



もしかしたら、私が抱いてた気持ちを喋ったのかもしれない。



坂下がいきなり私を突き放した理由は、コレだったんだ…。



きっと坂下は、悩んでたはず。



なのに私は、どうしてそれが分からずに…坂下のことを酷いなんて思ったんだろう。



私の目から涙がボロボロと零れ落ちるのと同時に、“想い”が堰を切ったように溢れだす。



「先生のこと、ずっと好きだったよ…。」



私は、坂下に縋りついて泣きじゃくった。



物分りの良い振りして“娘”でいたいなんて、嘘だ。



ホントは、ずっと“女の子”として愛されいと思ってた。



坂下に対し…



ううん、それだけじゃない。



自分の気持ちを偽り続けた結果、その後悔はあまりにも大きかった。