花が入っていた籠の底に、ブリザードフラワーが入ってた。



私が、坂下の病室の前に置いていったはずのものだ。



「あの2人の仲に亀裂が入るのを危惧したのか、君が置いていったのを看護師が持ち去ったらしい。」



坂下は、私が待っているのを知らなかったんだ…。



私はブリザードフラワーを手にすると、坂下の組まれた手に持たせようとした…けど、無理だったから諦めて顔の近くに置いた。



「ここ、置いとくから…。」



当然だが、返事なんて返ってこない。



野田先輩は気にするなって言ってたけど、そろそろ講堂に行かなきゃマズイよね。



黒川さんに籠を返すと、彼はポケットから1枚の写真を出して坂下の組まれた手の下に置く。



何で、この写真が…?



私は、坂下の手の下に置かれた写真を抜き取った。



1年以上前のバレンタインで、坂下が私の頬にキスしてる写真。



一見、唇にキスしてるようにも見えるキワドイ写真だ。



いつの間に撮られたのか疑問が残るけど、この頃が1番幸せだったな…。



「これ、頂戴。」



「駄目だよ、カズくんから頼まれてる。

人目につくのはマズイから、蓋をする直前に入れろ…ってね。」



「でも、私が持ってるなら良いでしょ?

コレ欲しい、頂戴!」



私の言葉に、黒川さんは頭を振る。