翌日、ブリザードフラワーと手紙を手に坂下の病室に向かう。



ドアに耳を当てて澄ませると、坂下とアンジェ先輩が談笑してる声がした。



私は手にしたものを病室の前に置くと、その場を後にする。



『大好きなパパへ


窓から見下ろせる桜の木の下で待ってます

一目でいいから姿が見たいです


あなたの娘より』



アンジェ先輩がいるから、会って話すのは難しい気がする。



ならば、せめて窓越しにお互いの姿を認めて、目を合わせるくらいはしたい。



私が彼女の立場だったら、すごく嫌だけど…。



私だって、譲れない部分はある。



私はただ、ひたすら待ち続けた。



日が暮れても、面会時間が終わってアンジェ先輩が病院から出ても、病室のカーテンが開けられる雰囲気は無かった。



翌日も翌々日も、学校をサボって朝から夜遅くまで待ったけど、坂下が姿を見せる気配は無い。



身体が、だるい…。



坂下を待つこと4日目、いつもは面会時間が終わるまで病室にいるアンジェ先輩が、珍しく早くに病院を出た。



坂下の洗濯物でも入っているのだろうか、肩からバッグをかけていた。



そんな彼女を見て、羨ましく思った。



木の幹に隠れるようにして待つことしかできない私には、彼女のことをズルイなんて言う資格は無い。



目の前が、ぼやけてきた。



涙のせいもあるけど、さっきからボーっとしてる頭のせいもある。



寒い中、ずっと立ってたせいかな?



頭がクラクラするけど、しゃがんだら坂下がカーテンを開けた時に気づいて貰えないかもしれない。



だから、我慢して立って待ち続けた。



「パパ、逢いたいよ…。」



そう呟いた私は、次の瞬間には意識を手放した。