坂下先生は、写真を手に取りながら言う。



「要求は、何ですか?」



坂下先生には、私がいつも見返りを求めていると見られているらしい。



『いらない』とだけ答えれば良いのに、坂下先生にちょっかい出すような答え方をしてみた。



「今の坂下先生は、教職失ったところで痛くも痒くもないんだから、脅す意味ないし。

ってか、別のとこで貰ったのに、坂下先生からも貰おうなんて思ってない。」



「まさか、アンジェを…?」



いつも澄ました顔してる坂下が、顔色コロコロ変えるんだから面白い。



「アンジェ先輩には手出ししないよ、恐いもん。」



「アンジェが、恐いですか…。

まぁ私としては、これが出回らないことは助かります。」



「そんなに、アンジェ先輩のことが心配?」



「それもあります。」



「それも…って、他に何があるの?」



「このことを、桐生さんの耳には入れたくありません。」



ふーん、若菜の耳に…ね。



「それは、遅いんじゃない?」



「まさか、ワカに言ったのですか!?」



坂下先生は、かなり強い口調で言葉を発した。



「私は、坂下先生の周辺を嗅ぎ回る趣味無いよ。

そんな暇あったら、女子にウケる蒼先生を密着取材するし。」



若菜のことなら、何でも知りたいけどね…。



「さっきの写真を撮った時も、坂下先生の病状が看護師の噂話で出た時も、ワカが一緒だった。」



その言葉を聞いた坂下先生は、頭を抱え込んだ。



「相当、ショックだった?

ついでに、教えてあげる。

私に見返りをくれたのは、ワカだよ。」



「ワカに何をした!?」



「ファーストキス、奪っちゃった♪」



この直後、坂下先生は激昂し、騒ぎを聞きつけた医者が駆けつけてきた。



坂下先生の身体に障るからか、私は病院から追い出されてしまった。