翠子の案内で、模擬店や展示場をいくつか回る。



「2人には、是非見て欲しいの。」



翠子に言われて入ったのは、書道部の展示場。



「お客さん体験コーナーがあるって、面白いね。」



「どうせ桐生が次期部長なんだから、来年は取り入れたら?」



野田先輩はそう言うけど、1学期にサボリ倒した私がなれるわけが無い。



「先輩、今日の練習はコレね。」



書道セットを指差して言う私に、野田先輩は苦笑しながらも従った。



特訓の成果か、野田先輩の字はかなり上達した。



「じゃあ、次は桐生の番。」



野田先輩から筆を受け取ると、翠子が言った。



「若菜さん、『立入禁止』と書いていただけないかしら?」



書き終えてから分かったけど、校内の貼り紙に使うんだとか…。



「とてもお上手だけど、高名な先生に師事していらしたの?」



書道部のコに聞かれた。



「ううん、部活の顧問が先生だから…。」



書道部の展示場を出た後、翠子に聞かれた。



「若菜さん、何故あのようなことを…。」



「父の指導は2年近く受けてないし、ジイサンに至っては教わったことも無いよ。

私、ウチじゃ出来損ないだから…。」



「それにひきかえ、坂下は桐生のことスゴく買ってるし、めちゃくちゃ可愛がってるもんな。」



可愛がってるって…。



実際、坂下とは2年になってから数える程しか喋ってないのに、野田先輩の目って節穴なワケ?