翠子と2人で抹茶を飲んでいると、母が帰ってきた。



翠子が、そつなく挨拶をこなす。



「若菜のお友達?」



はい…と肯定する翠子の言葉に被せるように、私は言った。



「お兄ちゃんの知り合いで、お参りに来てくれたんだ。」



聖女の制服着てる段階でかなりポイント高いんだけど、私のとお兄ちゃんの友達とでは扱いが段違い…ほら、母の態度が変わった。



私の友達には絶対に見せないような、丁寧な応対を母はした。



「この抹茶は…?」



まさか…お客様にやらせたんじゃ無いわよね?ってカンジで、母が私を睨みつけた。



いくら私でも、そこまでするワケ無いし。



「若菜さんが点ててくださいましたの、とても美味しいですわ。」



「あらまぁ、若菜ったら…。

お茶なら、他にもあるでしょ?」



「だって、緑茶も紅茶も淹れ方知らない…んぐっ。」



私の言葉は、母の手によって遮られる。



「ごめんなさい、すぐに新しいのをお出しするわ。

若菜、ちょっといらっしゃい。」



器を乗せたお盆を手にした母が、私に声をかける。



どうやら、私に拒否権は無いみたいだ。



般若の能面のような顔をした母を見て、そう思った。