「どういうことか、教えてもらっても良い?」



翠子が落ち着いてきたとこで、話しかけた。



「大学入試の直前、桐生さんに嫌いだって言ってしまいましたの…。」



「どうせ、お兄ちゃんがヒドイこと言ったんでしょ?」



「優さんのことを言われて、つい…。

だけど、もっと別の言い方があったはずだわ。」



翠子はハンカチを目頭に当て、自分を責め続けた。



「ごめん…知らない方が、良かったよね。」



翠子は頭を横に振ると、日記を胸に抱きしめた。



「私は、知ることができて良かったと思っていますの。

ご迷惑でなければ、この日記を私に頂けないかしら?」



持ち主でもない私が判断することじゃ無いんだけど、始末に困っていたのもあって了承した。



「喉、渇いたでしょ?

飲み物、持ってくるね。」



私は台所に向かうと、ジュースでも無いかと冷蔵庫を開けた。



ジュースどころか、麦茶もさっき出したので終わったんだ。



緑茶に紅茶にコーヒーといったのは、あるにはあるんだけど…。



お手伝いさんがいるから、自分で淹れたことが無い。



困り果てながらも戸棚を開けると、抹茶があった。



喫茶店に入り浸っているうちに、マスターの手ほどきを受けたことがある。



これなら、何とか…。