私が翠子を連れて行った部屋は、仏間。



「桐生さん…。」



翠子が、写真立てを見て呟いた。



「お兄ちゃんのこと、知ってたんだ?」



「一度、お話をしたことがあります。

なぜ、私をここへ?」



「これ、読んだから…。」



手にしていたお兄ちゃんの日記を、翠子に差し出した。



翠子は黄色い付箋が付いたページをめくると、日記だというのが分かったらしい。



戸惑いの表情で、私を見た。



「読んで良いから。」



そう言うと、翠子は日記を読み進めていった。



そのページに比例して、翠子の頬が涙で濡れていく。



お兄ちゃんは、翠子が好きだった。



だけど、お姫様な翠子に対して、自分の出生を後ろめたく思っていたお兄ちゃんは、それを言えずにいた。



「私、桐生さんの気持ちを知らなかったとはいえ…。

私のせいで、桐生さんは…。」



翠子はそう言うと、畳に突っ伏して泣きじゃくった。



翠子の、せいって…?