「私、好きな人いるんだ。

学校の…先生、なんだけど。」



いきなりのぶっちゃけトークに、翠子が首を傾げた。



「野田先輩、文化祭で翠子さんにイイトコ見せるんだって練習頑張ってるけど、デートもしてくれないんでしょ?

明日の部活にでも、デートする時間くらい作れって言っとくね。」



「ありがとうございます。」



翠子が、また頭を下げた。



私はただ、彼女に安心して欲しいだけで、頭を下げて欲しいわけじゃない。



「ってか…いい加減、私がサボりたいっていうか…。」



慌てて言い訳するけど、彼女は頭を下げたままだ。



「あのー、頭上げてよ?」



「勝手に後をつけて、突然お邪魔して…、お気を悪くされたでしょう?

何とお詫びをして良いのか…。」



そう言うと、翠子はやっと頭を上げた。



「そんなこと、別に良いよ。

それよりも、翠子さんに今から会って欲しい人がいるんだ。」



「私に…ですか?」



「嫌なら、無理強いしないけど…。」



「私は、構いませんわ。」



そう言ってくれたから、私は本棚から冊子を取り出すと、翠子と一緒に部屋を出た。



「この部屋にいるんだけど…。」



私が襖を開けると、翠子は中に入った。