「桐生は、練習しないの?」



文化祭で彼女にイイとこ見せようと頑張ってる野田先輩が、筆を手にしたまま尋ねる。



「こんな気分で練習したとこで、実りがあると思えないから。」



機嫌が悪い私は、ムスッとした顔で答えた。



「グラビアやってた女と、胸のデカさ比べるだけ損だぜ。」



うわ、ムカつく!



これでも、セーリ来てからちょっとは大きく…。



心なしか、なんだけど。



「そんなんじゃ、無いし!」



「違うのか?

…じゃあ、原因は坂下?」



核心を突かれ、目を丸くした。



「だって、坂下ってば…。

アンジェ先輩の胸元、ヤラシイ目で見てるんだもん。」



「ええっ!そっち!?」



今度は、野田先輩が目を丸くした。



そっちって、どっちよ?



「坂下の代わりに、休み返上で俺の指導任されたからだと思ってた。」



隠さなきゃいけない想い、自分でバラしてどうすんのよ!



「坂下の視線までは、気付かなかったなー。

桐生のクラス担任が、女子をヤラシイ目で見てるのは知ってるけど…、坂下もただの男だったとはな~。」



野田先輩は、楽しそうに言った。



「まさか、新聞部に売ったりしないでしょうね!?」



「まさか、坂下には借りがあるからな。」



借りって、何だろ?