「野田くんの指導、頼むわね。」



部長に言われ、夏休み中は野田先輩を指導することになった。



「何で、坂下が指導しないのよ?」



校門前で偶然会った野田先輩に、愚痴をこぼしながら校舎のそばを歩く。



「補習、入ったってさ。」



じゃあ、しょうがないか…。



「あ、噂をすれば…。」



野田先輩が窓から中を窺うようにしていたから、私も覗いてみた。



ここは確か、指導室。



エアコンで涼んでいるのか、アンジェ先輩が制服の胸元を掴んでパタパタさせていた。



そして、隣には坂下…。



「先輩、部室行きますよ。」



私は、鼻の下を伸ばしてる野田先輩の腕を掴むと、早歩きした。



「桐生、もうちょっと見る時間あるだろ?」



「何を?」



「何って、腹チラとかブラ…。」



言いかけたとこで、慌てて口を閉ざした。



「彼女、いるんでしょ?

男ってみんな、好きでもない女見て鼻の下伸ばすワケ?

サイテー…。」



私は野田先輩から手を放すと、足早に部室に向かった。



野田先輩が、早足で私を追いかける。



「桐生、何怒ってるんだよ?

俺、何かした?」



そう聞かれちゃったら…



「別に…。」



って、答えるしかないんだ。