「お喋りは控えるようにと、申し上げた筈でしょう?」



あーあ、やっちゃった…。



私は肩をすくめ、野田先輩と視線を交わした。



野田先輩のおでこに、坂下の指が伸びる。



ビシッ!



次の瞬間、野田先輩がおでこを押さえていた。



「お仕置きです。」



坂下はそう言うと、ニヤリと笑った。



そのまま踵を返そうとした坂下に、野田先輩はおでこをさすりながら言う。



「桐生は、お仕置きナシかよ?」



他の生徒たちにもズルイと責められ、坂下は困り果てていた。



坂下は、女に手を上げるのを非常に嫌がってる。



だから、私は前髪を掻き揚げておでこを出した。



「私は、構わないんで…。」



坂下の指が近づいてきたので、ギュッと目を瞑る。



なかなか痛みが感じられなかったので、目を開けると…。



躊躇してるのか、目の前にある坂下の手が震えていた。



「もうイイよ、先生。

そんなことより、話の続きしてよ。」



1年の言葉で坂下は手を引き、踵を返した。