職員室の途中にある空き教室の前を通りかかると、中から声が聞こえた。



その声が「坂下」なんて言うから、思わず立ち止まった。



教室の中を窺うと、坂下と教頭がいた。



2人とも深刻な話をしているみたいだったから、少し後になってから声をかけようと思った。



「坂下、お前が生徒に手を出すような奴じゃないことくらい分かってる。」



えっ!?



私はその言葉を聞いて、教室の前を離れることができなくなった。



「私は、クビを切られても構いません。

彼女は、処分しないでください!!」



坂下の、悲痛な叫びが聞こえた。



耳を澄ませて、内容を聞き取ろうとする。



「悪いのは、全て私です。

今回のことは、私に隙があったから…起こったことです。」



まさか、1年の終わりに流された噂が…今になって学校側に!?



「自分を偽って、血のつながりもない子供を育てたツケが回ったか?」



和歌ちゃんは、坂下の実の子じゃなかったんだ…。



『ワカは、私の娘ではありません!』



前に私に向かって言ったそのセリフは、和歌ちゃんに対して向けたものでもあったのかな?



「あっ…!」



危うく、書道具を落としそうになった。