壇上の校長と向き合って、挨拶の文章を読み上げる。



だけど、心の中では別のことを考えていた。




今時、毛筆体なんてパソコン使って出力するのが当たり前。



なのに、私の手元にあるのは明らかに誰かが書いたもの。



誰が、書いたんだろ?



ってか、私には関係ないっ!!



ウチが書道家だからって、私までその道に進むことないんだから!!



ここ最近、ジイサンたちに反発してるのもあって、筆を持つことはやめた。



読み終えた文章は、元通りに畳んで校長に渡す手順になってたけど、私はそれを手にしたまま壇上を降りた。



あとで担任から小言を言われそうだけど、まぁ良いか。



校長や来賓の長い話の間、蛇腹状に畳まれた紙を広げて眺めた。



私も、こんな風に書きたいな…。



何考えてるのよ?



書道なんか、もうやめたんでしょ?



だけど、自分の手元を見る度に、書いた人に対する興味は増すばかりだった。