ぼーっとステージを見てたら、いつの間にか蒼が目の前にいた。



おそらく、ステージから降りて歩いてきたんだろう。



私からは離れているけど、坂下も客席に降りて演奏しているのが見えた。



「桐生、つまんなそうな顔すんなよ?」



ギターを爪弾きながら、話しかけてきた。



「鬼マサ、演奏中にどんだけ余裕かましてるのよ?」



「テープからバンドスコア起こした特権ってやつかな?僕のパート、簡単にしたんだよね。」



うわ、それってずるくない?



「いい物やるからさ、元気出せよ?」



そう言った瞬間、ポケットから何かを取り出して私に軽く放り投げた。



見ると、磨り減ったギターピックだ。



「こんなもの、要らない…。」



蒼という奴は、女子はみんな自分のことが好きだから何をあげても喜ぶ…とでも思っているんだろうか?



だとしたら、とんだナルシストだ。