ステージパフォーマンスの後片付けをして講堂内に設けられた1・2年の席に着くと、教師たちによるバンド演奏が始まる寸前だった。



ステージに坂下を見つけた私は、正直驚いた。



一緒に泳いだ夏の日の坂下が、そこに居たんだ。



あの時、メガネ外すのも前髪おろすのも絶対ダメって言ったのに…。



「あんなカッコイイ先生、ウチの学校にいたっけ?」



「ちょっと年食ってるけど、なかなかのイケメンだよね。」



ほら、女子たちが騒ぎ始めたじゃない。



「この私が、あんなイケメンをノーマークだったとはね…。

ワカは、誰だか分かる?」



自他ともに認める新聞部のエースとなった深夏が、悔しそうに言った。



「坂下先生。」



私はそう呟くと、唇を噛み締めた。



「さすが“愛人”!」



「ちょっと、ワカをからかうのやめてよ!」



誰かが投げかけた言葉に、深夏が反論した。



「静かにしてよ、坂下みたいなオジサンなんかどうでも良いの。

私は、蒼先生の音色に耳傾けてるんだからっ。」



他の生徒がそう言ってくれたおかげで、大喧嘩っていう事態は免れた。