クリスマスイブ当日、父は午前中に出かけてしまった。



仕事だって言ってたけど、愛人に会うためなのは丸分かりだ。



玄関で父を見送ってから、母のもとに行ってみた。



「夕方、御爺様とパーティーに出かけるのだけど、大雅はどうするの?」



「そんな時間があれば勉強するよ、受験生だからね。」



お兄ちゃんと、そんな話をしていた。



私に気づいた母が、口を開いた。



「若菜、そういう訳だから大雅と留守番してちょうだい。」



えっ?



「私は…?」



声かけてくれないの?



「アナタ、まさか行く気でいるの?

冗談じゃないわ、恥ずかしくて連れて行けないわよ!」



母はそう言い捨てると、この場を去った。



おそらく、ジイサンのとこにでも行ったのだろう。



まだその場にいたお兄ちゃんに、話しかけてみる。



「お兄ちゃん、クリスマスケーキ買って来ようか?」



「要らない。」



私の問いかけに間髪入れずに答えたお兄ちゃんは、自分の部屋に戻った。



家族で過ごそうって、頑張ろうと思ったのに…。



「やっぱ、ダメだったみたい。」



そう呟きながら、私も自分の部屋に戻る。



だけど、自分の部屋に籠っても面白くないから…。



身支度を整え、クリスマス一色の街へ出かけて行った。