「ここは……?」


何も見えなかった……

しかし、時間が経つにつれて、眩しい光が徐々に引いていった。

私の目は、段々とこの世界のものの輪郭を捉えていった。


「一体、どこ? 私、どうなったの?」


私はぼんやりと立ち尽くしていた。

荒涼としたその場所は、見渡す限りの荒地。

頬に冷たい風を感じる。

しかし、私は微かにここが何処なのか、覚えがあった。



「元の……世界?」


そこはパンターでもアルビンでもヴォルブでもない……ただ、遥か彼方には、キラキラと光を散りばめたような夜景が見えた。


『ブー、ブー』


ポケットからバイブの振動が伝わった。

それは久しぶりに感じる、ケータイのマナーモード。

私は恐る恐る、ポケットのそれに手を伸ばした。



「うららちゃん、一体、どこにいるの!? 勤務中に突然いなくなって、みんなで探してるんだよ! 指名も沢山入ってるし……早く、戻って来なさい!」


受け方も中々思い出せず、覚束ない手元で受け取った着信では……デリヘル事務所のスタッフのそんな怒鳴り声が耳に入った。


「いや、その……勤務? 指名?」


話せば話すほどに、会話が噛み合わなかった。

だって、私はパンターのプリンセスで、ウルフとの激闘の直後のはずで……。

何が何だか、分からない……電話口でそんな状態の私には、デリヘル事務所的にも窮したようで。

勤務中に急に体調を崩したものとして扱われ、電話を切られた。