ルルの声が届いたのかは分からない。

だが、ラッドは背を向けた。

(………そう。それで良いの。……生きなさい)

生きてほしい。自分の代わりに生き延びてほしい。

ルルはそんな思いを込めて、もう一度ラッドに言う。

「いきなさい!!」

「そうはさせません!!」

ラッドの背を、黙って見送りそうになったノエンは、ハッと我にかえると走り出す。

だが―。

「ふっ!」

リュートの剣が、ノエンの刀を弾き飛ばした。

そして、呆気にとられている間もなく、今度は素早く団長の腕を切り落とす。

「うぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

一瞬のことで団長も反応が遅れ、無くなったものに気付いた途端、悲鳴をあげた。

リュートはそんな団長の姿に目もくれず、落ちた起爆装置を踏みつけて壊した。

すると、ルルの首輪と腕輪が外れる。

「…………リュート………」

どうしてと聞こうと口を開いたその時―。

「きゃぁぁぁぁぁ!!」

つんざく悲鳴が、会場中に響き渡る。

何が起きたのか、呆けていたノエンは顔をあげて観客達を見た。

ラッドも何事かと動きを止めて、きょろきょろと見回し始めた。

ルルも顔をあげる。

すると、妖精達が天井を舞い、カーバンクルがテントの布を切り裂いていた。

そして、突如各観客席から、爆発音と共に火の手が上がる。

「……何が―」

「幻獣(俺達)の怒りだ」

ノエンの疑問に答えたのは、うっすらと笑みを浮かべたリュートだった。