「さて、お待たせいたしました。いよいよフィナーレです!」

ルルとラッドのショーが終わると、団長は両腕を広げ、声高々に言う。

「リュートとノエンの剣舞を、どうぞご覧下さい!」

(え?)

隅へと引っ込んだルルは、団長の声に思わず振り返る。

そんな予定があったなど、聞いたことがなかった。

「……何のつもりだ」

リュートも知らなかったのか、剣を持ちながら団長を睨んでいる。

「リュートの細身の剣と、ノエンの刀。この二つで彼らは舞います。刀と言うのはあまり馴染みの無い方も多いでしょうが―」

刀とは、海の向こうで昔使われていた武器だ。

団長が刀の説明をしている間に、コツコツと足音か聞こえ、ルルとリュートは振り返る。

すると、着替えたのか何時もの服装のノエンが、手に長細い黒い棒のような物を持っていた。

これが、刀だろうか?

「よろしくお願いしますね、リュートくん」

「……」

「リュート。無視は良くないわ」

穏やかなノエンに対し、リュートは自分より背の高い男を睨み上げた。

ルルの諭す声にも耳を貸さず、探るようにノエンを見ている。

「……」

「……」

暫く気まずい空気が流れ、ルルはどうするべきかと困るが、それでも終わりと言うのはくる。

「団長の命令で仕方なくだからな。俺はお前なんか嫌いだ」

「ちょっと、リュート!」

「いいんですよ。ルルさん……当然のことなんですから」

咎めるような声を制し、ノエンは悲しそうに微笑んだ。

(どうしてリュートは、こんなにノエンさんのことを嫌うんだろう?)

リュートが人間嫌いなのは知っているが、ノエンに対する警戒心が強すぎる気がする。

「とにかく、よろしくお願いします」

「……ふんっ」