桃花はニンマリしながらなんだか斜め上の回答をし、卵に潜らせた牛肉を頬張った。

そういえば、今日不破さんが話すのを見ていて、よくわからない胸の高鳴りを感じたっけ。

もしや、あれがときめき? いやでも、恋のそれとはちょっと違うような……。

幸せそうにもぐもぐと口を動かす桃花を目に映しながら、私はひとり首を傾げる。

ヤバいな私、恋愛がどんなものだったか忘れかけているよ。四年のブランクは大きい……。

でも、あの頃みたいな恋する感覚を、もう一度味わいたいとは思う。そしてそれが、颯太のときよりもっと強いものだったらいいな、とも。

そのお相手が不破さんだとは考えにくいけれど。

パワーアップして帰還した新社長と、手が届くところにいたシェフの姿を思い浮かべながら、とりあえず空腹を満たすため、私も味が染みたお肉を口に運んだ。