私はまっすぐな長い髪だけは自慢できるけれど、それだけ。顔は派手なほうで気が強く見られることが多いし、痩せ型で胸が豊満なわけでもないし。

これといって誇れるような特徴のない自分からすると、今隣にいる彼は芸能人のように住んでいる世界が違う気がする。

特にこの不破さんは、他の人とは違う“なにか”を感じさせる独特な雰囲気を持つ人なのだ。具体的に説明はできないけれど、なんとなく。

そんなことを考えていると、切れ長の二重の瞳がこちらに向けられる。


「あんたは……」


彼は、カジュアルな通勤服姿の私を頭からつま先までざっと眺めて、ひとこと。


「自殺?」

「なワケないじゃないですか」


思わずツッコんでしまった。物騒なことを言わないでほしい。

無表情でボケをかます不破さんは、小首を傾げて私の顔を覗き込んでくる。


「じゃあ、虚無感が漂いまくってるように感じるのは、俺の気のせいか」


意志の強そうな瞳で見つめながらそう言われ、ギクリとした。