お香から漏れ出てくる香りを嗅ぎながら、早紀は物凄くリラックスした顔になっている。


 見ている限りでは横顔がいつもとは違っていた。


 これは明らかに彼女の緊張が解けたときの表情だ。


 僕はその横顔をじっと見つめながら、


「……君、結構変わった趣味あるんだね」


 と呟くように言った。


「ええ。あたし、お香とかアロマセラピーが趣味なの。毎晩眠るとき以外は、絶えず焚いてるわ」


 早紀がそう言い、頷いてみせる。


 僕は彼女がロウソクの煙を吸い込みながら、和んだ表情をしているのをじっと見つめていたが、やがて、


「俺、腹減っちゃってるんだよな」


 と言い、シチューの入った鍋を右手の人差し指で指差した。


「あ、ごめんね。お待たせしちゃって」