町は鮮やかに、そして白く染まり始めていた。


 そう、もうすぐこの町にも二人で近付ける季節がやってくるのだ。


“ずっと寄り添ってたい”


 僕はそう思いながら、早紀が料理を作るのをじっと待ち続けた。


 トントンという包丁の音がして、その後、切られた具材が煮えるときの香ばしい匂いがする。


 僕たちにささやかながらも幸せが訪れていた。


 それはおよそ金銭には替え難い類の、若い僕たち特有の幸福感だ。