今、井下の顔見れない。



「紗知さん、兄貴のこと大好きなんだね」


「そ、そういうわけじゃ……!」



ない、と言おうとしたけど、否定出来なくて言葉を飲み込んだ。



「違うの?」



瑠花さんは私の顔を覗き込み、ニヤリと笑った。



この笑顔、見覚えしかない。



この兄妹、やっぱり似てた……!



「……違いません」


「いいなあ。うちにも、存在自体が好きって言ってくれる人、いないかなあ」



私、そんなふうには言ってない。



「いるだろ、お前にも」


「……あれはノーカン」



誰のことを言ってるんだろう。



瑠花さん、思いっきり顔しかめてるけど。


そんなに嫌な人なのかな?



「るーかちゃーん!」



すると、後ろから瑠花さんを呼ぶ大きな声が聞こえてきた。


瑠花さんはさらに嫌そうな顔をする。



「うわ、出た。じゃ、紗知さん、またね!」



瑠花さんは誰かを確認せず、逃げ出した。



私が言葉を返す暇もくれなかった。