須藤君は空気を読んだのか、静かに離れていった。



「……別れるって言ったくせに」


「あれは、怜南さんが言わないってわかってたから」



そうだとしても、楓真の口から別れるなんて聞きたくなかった。



「……ごめん」



すると、楓真は小さな声で謝った。


なんだか、私が悪いことをしている気分になる。



でも、そう簡単に許せることでもなかった。



「楓真は……私が別れるって言ったら、別れるの……?」


「納得できる理由であれば。紗知のことは、俺が幸せにしたいと思ってるし。だから、怜南さんには気に入られてなきゃいけないわけで」



顔には出ていないけど、楓真はどこか慌てているようだった。



それがなんだか可愛らしくて、笑みがこぼれる。



でも、そうか。


あのときのセリフは、そういう意味だったのか。



「……バカ」



楓真は私のバカに対して、微笑みながら私の手を取った。



「うわー、バカップルがいるー」



会計を終えたお姉ちゃんが、適当に、棒読みでからかってきた。


だけど、さっきみたいに楓真をいじめるようなことは言ってこなかった。



そしてお姉ちゃんの希望通り、クレープを食べて解散した。