「簡単なことだろ。僕に居てほしいと思ったなら、そう言えば良い。……それだけで、充分お前の気持ちが分かるから」

「………アルに、居てほしい。私……アルが、好きだから」

きっと、誰よりも一番側にいたい人。ティアを思う気持ちとはまた違うもの。

「……上出来だ」

そう言って、アルは優しく微笑んだ。


あの後、ティアとゼイルは龍の谷へと帰った。

いつか、龍と人が共に生きれる道を見付けたら、また再会しようと約束をして。


アルとレインは、かつて住んでいた小屋にやってきた。

どうしてそこに住んでいたのか、誰と居たのかを、レインは思い出すことが出来ず、不思議な気持ちだったが、レインはここで暮らしたいと思った。

レインとアルが一緒に暮らしはじめて一年後のこと、レインはアルに気になっていたことを尋ねた。

「……今、何て言った?」

「ほら、セレーナとロランに子供が出来て、そのお祝いに行ったでしょう?……だから、私も子供欲しいなって思って」

レインのとんでも発言に、アルは固まった。

この前セレーナに会って、さりげなく男女のあれこれをレインに教えてやってくれと頼んだが、レインは理解しているのかどうか怪しい。

なんせ、手は繋いでもそれ以上のことはなにもしていないのだから。

「……お前、セレーナから子供を作るのに必要なこと、ちゃんと教わったか?」

「?セレーナがね、そう言うのはアルに全部任せてればいいわ!って言ってたよ」

(……あの女)

一国の王を「あの女」呼ばわりもどうかと思うが、アルは頭が痛かった。

「どうしたの?……子供を作るのって、何か危ないことなの?」

「………危ないと言えば、危ないな」

主に彼の理性のことだが、そんなこと、レインに通じる筈がない。

「え?」

「……一応聞くが。お前が子供を得るのに、僕としなければいけないことがあるとして、お前はそれを受け入れる覚悟があるか?」