後ろから聞こえた声に、レインは振り返った。

そこには、ここにはいない筈の人がいた。

「どう……して?」

『おいらが兄貴に頼まれて、先回りしたんだよ』

今度は上空から声がし、レインは上を向いた。

そこにはゼイルの姿があり、レインは驚きに目を見開く。

「……お前は、馬鹿だな」

「……だって、私、アルは龍の谷にいるべきだと思って……」

アルにとっての故郷は、龍の谷以外には無い。そうアルが言っていた。

龍の谷が、アルの居場所なのだと。

「僕は、僕の居場所くらい自分で決めるし見付ける。……いや、もう僕の居場所は、決まってるんだ」

「……?」

アルの言葉の意味が分からず、レインは訝しげな視線を送る。

「僕の居場所は……お前だ。レイン」

「私?」

「例え龍の谷が僕の故郷でも、そこにお前が居なければ、何の意味もない。……僕は、お前と、離れたくない」

アルはグッと手に力を込め、そしてレインを見た。

『……レイン。アルとレインは、きっと離れちゃいけないの。だから、二人には一緒に居てほしいとティアは思うの』

黙っていたティアがそう言うと、ゼイルも便乗するようにバタバタと翼を動かす。

『おいらもそう思うぜ!兄貴は姉貴が好きだからな!姉貴が谷を出るって聞いて、珍しくうじうじ悩んでたみたいだ―ほわぁぁぁぁぁっ!』

「……チッ。外したか」

愛用の槍をぶん投げ、アルは舌打ちをした。