新入部員の勧誘は四月早々から始めた。

 それが五月第一週に入った今まったくの成果なしというのも、いかがなものだろうか。

「あたしもそうだけどさ、部活って中学でやってたの続けてる子も少なくないよね。運動部と吹奏楽部は特にそんな感じしない?」
「そうだね」

 やはり狙うは帰宅部である。

「演劇部って、あたしの中学なかったんだけどさぁ。いまいち活動内容にピンとこないっていうか……芝居の練習して、披露は学祭とかでするの?」
「うん。もちろん学祭は、演劇部にとって一大イベントのひとつだよ。だけど大会もあるよ!」
「そうなんだ。知らなかった」

 まぁ今は大会の心配より、稽古より、部員集めの方が気がかりで仕方ないのだけれど。

「あたしにできることあったら言って」
「……え?」
「部員確保は簡単にはいかないけど、宣伝とかならできると思うし。配るものあれば女バスと男バスの仲間とか、SNSやラインで拡散くらいなら手伝えるよ」
「ありがとう小野寺さん……! 心強い!」
真琴(まこと)でいーよ。きりって呼ぶね?」
「うん!」

 初めて名前で呼び合う友達ができたことが嬉しい。

「真琴、優しいね」
「んー。なんていうか、きりの熱意にやられた。きりって人を動かすところあるよね」
「そう……かな?」
「きりだから協力しようって思えるんだよ。あの人気者の西条くんに突撃した勇気を褒め称えたい」
「そんな、褒め称えたいだなんて」

 たまたま入り口で接触できたのがラッキーだった。

 もしも西条くんが最初から女の子の輪の中にいたら、近づくのは難しかっただろう。

「勇者だね。普通そこまで行動できないよ。西条くんのことはどう転ぶかわかんないけどさ、演劇部の存続願ってる」
「ありがとう!」

 熱意なら、ありますとも。

 だってお芝居は、私の、すべてだから――。