「……まぁ、イケメンである必要ないんだけどね」
「華があったほうがいいんじゃないの?」
「いくら顔立ちが整っていても、緊張して動けないとか、台詞が覚えられない人は困る」

 やはり大事なのはお芝居に対する姿勢や、どんなお芝居ができるかってところなのだ。

 苦手なら苦手なりに頑張ってくれる人は、この限りではない。

 なにごとも経験。

 最初から上手くできるわけ、ないんだし。

 だけど悠長なこと言ってたら廃部の未来が待ってるんだよ……!

 そりゃあ焦りもするよ!

「ハッキリ言うね」

 小野寺さんが一時間目の授業の用意を取り出す。

 予習をしてこなかったようで、今からノートに教科書の英文を写すらしい。

「その点、西条くんは適役だと思ったよ。さっき話してみて“自分の魅力”よく理解してたもん」
「……なんか吉川さんのイメージ変わった」

 私のイメージ、とは。

「悪くとらないでね? もっとボーッとしてる子だと思ってた。天然っていうか」
「えぇ!?」
「いや、天然には違いないと思う。なんていうか、好きなことになると熱くなるタイプなんだなぁと」
「べ、別に私は天然じゃ……」
「いや絶対天然だよ。賭けてもいい」

 賭けてもいい、なんて自信満々に言われる意味がわからず困惑していると

「その反応だよ」

 クスッと笑われてしまった。
 
 小野寺さんは美人で、感じよくて、明るいしハキハキと話す。

 バスケ部員でなければ猛アタックしていたのになぁ。

「焦ってる。もう部活決めちゃった子多いだろうし」