やっぱり西条くんは敷居高だったかなぁ……。

 でも。

「女の子集めるには彼が適役なんだよねぇ」
「客寄せパンダってわけか」
「え? パンダ!?」
「あの彼をていよく使おうなんて。吉川さん結構小悪魔だね」
「そんなことないよ。もちろん西条くんにだって大きなメリットはあるから!」
「メリット? どんな?」
「そりゃあ、演劇部に入れば、演劇の楽しさをわかってもらえるでしょ。そうなると彼も楽しいでしょ? 高校生活が充実するでしょ! 青春って感じでしょ!!」

 私が指折り数えていると、

「吉川さんがすごくポジティブで、そして演劇が大好きなんだってことはよくわかった」

 隣から肩をポンと叩かれた。

 もちろん演劇は好きだ。

 だからこそ、自信を持って勧誘したいし、その世界に引き入れたいと思っている。

「それならさ。美女も募集したら?」
「そうしたいのは山々なんだけど、やっぱり私に使える時間って限られてるから、一番は不足してる男子部員が欲しいんだよね」
「男、少ないの?」
「うん。一人だけしかいない」
「うわぁ。そりゃ大変。配役もだけど力仕事とかもありそうだし男手は欲しいんじゃない?」

 最初はポカンとしていた小野寺さんだけれど、親身に話を聞いてくれているのが嬉しい。

「西条くんが入れば、西条くんのためならなんでもやります!……って子も確保できるだろうなぁ」

 さっき追い払われたときのファンの子たちを思いだす。

 あの子たちだって、放課後大好きな西条くんと部活に励めたら幸せに違いない。

「案外打算的だね。主役級男子と働き蟻を同時に確保しようだなんて」
「あ、アリとか思ってないよ!? お芝居は、みんなで作るものだから!」
「ふーん」