机に革製の茶色いスクールバッグをおろすと、人差し指を立て、こう言った。

「部員に!」
「え?」
「だから、ほら、勧誘したくて!」
「へぇ。吉川さん、何部だっけ?」
「演劇部!」
「……演劇部」

 ワンクッション遅れてきた反応に、そんな部あったの? とでも言いたげな小野寺さんの気持ちが表れている。

「実は私、演劇部の、たった一人の新入部員なの」
「吉川さんしか入らなかったの?」
「そうなんだよね。今の三年生が卒業しちゃうと来年には廃部が決定してしまうから、全力で新入部員集めてる!」
「あー、なるほど。それで西条くんか」

 納得した様子で右隣の席にリュックをおろす、小野寺さん。

「西条くんなら撮影をこなしてるから、舞台に立つ度胸ついてるだろうね。それになにより、あの人気。新入部員が殺到するのを期待してるわけだ?」
「その通り……!」

 私の考えがあっという間にバレた。

 まあ、隠すつもりはないけれど。

「厳しいんじゃないかな」
「……へ?」
「彼、忙しい人だって有名だから。モデル傍ら成績優秀らしいし。どこかの雑誌との専属モデルの契約した、って噂も聞いたよ」
「ええ……!」

 一気に勧誘のハードルがあがった。読者モデルだからまだ少しは身近に感じられたのに、専属となると本当に遠い人のようだ。