うぅ。

 勢いに負け、追い返されてしまった。

 せっかく会えたのに。

 次は移動教室のタイミングを狙ってみようか。

 それとも登下校で一人になったときがチャンスだろうか、なんて考えていると――

「吉川さんって西条くん狙いだったの?」

 話しかけてきたのは、クラスメイトの小野寺(おのでら)さんだった。

 女バスに所属していて、背が高く、ショートカットのよく似合う子だ。

「違うよ!……いや、そうだよ!」
「は? どっちなの」
「彼女になりたいわけじゃないよ!」
「“付き合って”って言ってなかった?」

 一部始終を見られていたらしい。

「付き合うってのは、放課後の話で」
「放課後?」
「うん。じつは私、イケメンを探してるの。心当たりあったら紹介してくれないかな」
「イケメンを探してる……?」
「これには、深い事情がありまして」
「へぇ。吉川さん、面食いなんだ?」
「だから彼氏候補じゃないんだって……!」

 ムキになる私に「もっとわかりやすく説明してよ」と、小野寺さん。

 たしかに私の話は唐突すぎた。

「西条くんっていったら学年イチの有名人だよね。先週発売された雑誌の『彼氏にしたい男子高校生』100選で堂々の一位だったけど、彼女の影は一切なくてミステリアスなところも人気の秘密だって言われてる」

 ――その通り

 うちの高校の一年に、読者モデルをしている有名人がいて。

 女の子たちから人気爆発中だという話を聞いたからこそ、私は彼に目をつけたのだ。

「彼氏じゃないなら、なににしたいの?」
「それは――」