「ちょっとごめんね」
背後から声をかけられた。
今度は、さっきとは違いよく通る声で。
「……あ!」
ふわっふわの色素の薄い茶髪。
すっと通った鼻に、スラリと高い背。
キラキラしたオーラ。
間違いない。
「西条くん、ですよね」
「え?」
「私、C組の、吉川きりっていいます!」
一瞬ポカンとしたけれど、すぐに
「吉川さん。はじめまして」
と笑顔を見せた。
さすが西条くん。
切り替わりがはやい。
「俺になにか用かな?」
「付き合って欲しいんです!」
「……え?」
「放課後、もしお時間ありましたら、演――」
「ちょっとアンタ!」
会話を中断させたのは、腕を組み、ギロリと私を睨みつけてくる女子たち。
「誰か知らないけど抜け駆けは許さないから」
――え?
「西条くん、ほら!」
「はやく! 中へ!」
もしや西条くんのファン……!?
「またね、吉川さん」
笑顔を崩さない西条くんが、背中を押され、教室の中へと入っていく。
(ちょっ……、まだ話は終わってない!)
「待って、西条く――」
「いいから教室戻んな!」
「えぇ……?」
「二度と来ないでよね!」