「隣いい?」
「うん……!」

 縁側に、ナイキくん、私、いっちゃんの順に三人で並ぶ。

「本当はあの絵本は、誰にも見せるつもりなかった。自分のためだけに描いたから」

「それで英語か」

 と、ナイキくん。

「間違ってきりが読んだら暗い気持ちになると思った」
「でも読ませた?」

「違う……」

 ――思い出した。

「表紙に白と黒のモノクロの、ピエロのお面をかぶった少年が描かれていたの」
「ああ。もちろん俺が描いた。THE BOY――あれは生まれ変わったピエロだ」
「あの絵を見た瞬間、怖くなった。ゾクゾクして、なんていえばいいかわからないけど禁断の書みたいな感じがした」
「言ってたな。きり、あの絵本がこわいって」
「だけど読んでみたかった。読んでって頼んだのは私だった」
「そうだ。和訳で読み聞かせたら、きりは半分も理解できていなかったのに真剣に聞いていた」
「それは違う」

 ナイキくんが言った。

「吉川は、きっとわかってた。わかってたから、一色と同じ世界に行きたかったんだろ」
「そうかも……しれない。いっちゃんは憧れだったから。今も、変わらないよ。ずっと昔からヒーローだし、これからも――」