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 リハーサルは上手く行った。

 あとは本番も同じようにすればいいだけ、なのだけれど。

「き……緊張して心臓が口から出てきそう」
「ほんとお前、仮面かぶってねえとチキン野郎だな」
「ひどい!」
「だいたい村人役で緊張もなんもねぇだろうが。台詞も一番少ないクセに」
「ナイキくんも村人役なんてビックリだけどね!」

 学園祭の配役は、主演が部長と西条くんになった。

 西条くんのおかげでチケットはすぐに売り切れた。

 学外からのお客さんが、既にたくさん観客席にいる。

 ああ、ステージの脇からその風景を眺めると余計に緊張してきた。

「来年はさぁ。ナイキくんが主演しなよ」
「お前がどうしてもっていうならしてやってもいーよ」
「……っ」

 最近のナイキくんは、なんだか甘い。

「合宿で思ったんだけど」
「なに?」

 夏休みに行われた五日間の合宿では部員それぞれが成長でき、想い出もでき、かけがえのない時間を過ごすことができた。

「お前、普通に芝居上手いよ」
「え……」
「自信がないだけで。十分素質ある」
「ナイキくんに言われるとめちゃくちゃ自信つく」
「だったら毎日言ってやろうか?」
「えぇ?」
「きり才能あるよ」
「やっ……言わなくていい!」
「なあ、きり」
「ん?」
「学園祭終わったら言いたいことある」
「……私も」
「同じことだったりして」
「どうかな。私は違うと思う」
「いーや? きっと同じだ」

 おなじだと、嬉しいな。