嘘つきピエロは息をしていない


 みんなが年相応なことをしている時間に俺は働いて。

 誰よりも先に大人になろうとしていた。

「遊び方もわからないまま大人になると大変だぜ?」

 いつもならこんな話。

 こんな無責任な言葉。

 聞き流して終わるのに。

 今は引っかかって仕方ない。

 ――吉川きりのせいだ。

「お前、一人暮らししてるらしいな」
「……まぁ」
「しかもいいところ住んでるだろ。言っちゃなんだが新人の稼ぎで暮らせるとは思えないけど」
「事務所に借りてもらってるんです」
「なるほどな。きっと高いレッスン料なんかも立て替えてもらってるんだろうな?」
「どこまで俺のこと調べたんですか」
「別に。住んでるとこくらい調べたけど。あとはオッサンの妄想」
「お察しの通り。俺にかかる金は大抵事務所もちです」

 家賃も仕事のための授業料も、それから学費だって。

「期待のニューフェイスくんなんだねぇ」
「どうですかね」
「投資した分返ってくると思われてるからそれだけ優遇を受けられる。違うか?」
「ええ。そうですね。期待は、されてると思います。俺を拾ってくれたの社長なんですけど。どんどん大きな仕事持ってくるので」