マンションの下に、一台の車が停まっていた。
「乗れ」
「…………」
「いいから、乗れ」
男に催促されるままに、黒のセダンの後部座席に乗り込む。
眠っている吉川を助手席に寝かせたあと俺の隣に乗り込んできた男の美しい横顔に思わず息を呑む。
職業柄、整った顔のやつなんて見慣れているのに。
そいつらに匹敵するか、それ以上のものを持っている。
バックミラーにうつる運転手はサングラスをかけた男で、黒髪をうしろで一つに結っている。
顔はよく見えないが無精髭を生やした男前だ。
どこかで見たことがある気がしないでもない。
「……お前なにがしてぇの?」
隣の男が口を開いた。
かなり気が立っているが、なんとか冷静を装っているように見える。
黙っていると質問を重ねられた。
「吉川を傷つけるようなことしておいて。どうして助けようとした?」
「……!」
「わかってんのか? 俺がお前を止めなきゃ、あの男は今頃大ケガしてた。……いや、死んでいたかもな」
俺は灰皿で榊の頭を力一杯殴る気だった。
「そうだな」
「そうだなって、お前――」
「汚しちゃいけないと思った」


