――苛立っている
「俺たちを怒らせたこと許してあげる。可愛い後輩だしねぇ。もう帰っていーよ。そのかわり、この子は置いていけ」
「断ったら?」
「事務所にいられなくしてやろう」
眠った吉川を抱えて男二人から逃げきるなんて不可能だ。
かといって従ったら吉川は――
「わかりました」
「お利口な後輩をもって幸せだよ」
アンタらが救いようないクズだとわかったので、踏ん切りが付きました。
近くに置いてあったガラス製の灰皿をつかみ、振り上げる。
目を見開いた榊を視界に捉えた。
「いられなくなるの、どっちでしょうね」
「西条……?」
「その顔。アンタの心みたいにぐちゃぐちゃになったら仕事なんてひとつもまわってきませんね」
結局ここも俺の居場所じゃなかったのかもしれない。
やるべきことは見つけられても、やりたいことなんてない。
始めたばかりの頃に抱いた高揚感よりも、義務感やプレッシャーが膨らんでいくばかり。
ねえ、吉川。
君はどうしてそんなにキラキラした目をしている?
君がいるのはごく普通の環境で。
俺がいるのは選ばれた者しか足を踏み入れることのできない環境のはずだ。
なのにどうしてそんなに楽しく生きられる?


