嘘つきピエロは息をしていない

 別に期待なんてしていなかった。

 その男を信じていたわけでもない。

 ただ、行く宛もなかったから。

 他に選択肢がなかった。

 ついて行った先は、想像できないくらい、眩しい世界だった。

 いい服なんて着たことがなかった。

 人に求められたこともなかった。

 どうして生きているかも生まれてきたかもわからない。

 そんな俺に、光が当てられた。

 他人からチヤホヤされ、褒められ、必要とされ――ようやく存在意義を見つけた。

 柄にもなく王子キャラなんて演じてまで居場所を確保したんだ。

 ミステリアスさを出すのはあれこれ探られたくないから。

 心も、本当の自分を見せないことは窮屈でもあり楽でもあった。

 事務所の人間が、どこでフラフラしているかわからない俺の母親と連絡がとれたとき、二つ返事で俺を預けることを承諾したらしい。

 契約書もろくに読まずに。

 金がかからないことを知ると喜んでサインし、俺を事務所に預けた。

 少年時代に思い描いた、家を出たいという夢が、あっさりと叶った。